「アレス……」

「ソフィア?!」
 
またソフィアの声が響いた。

「助けて……アレス!」
 
ソフィアが俺に助けを求めているこんな時に俺は何をしているんだ?!

「諦めるな、俺!」
 
俺は頬を強く叩く。

「どうした、アレス?!」

「テト、ソフィアの声が聞こえるんだ」

「ソフィアの声が……?」
 
俺がそう言うとテトは考え始める。

「おそらくその声は、魔人の力が混じったアレスにしか聞こえない物なのね……。アレス、これが最後のチャンスよ」

「何か考えがあるのか?」

「ええ……」
 
目を瞑ったテトは人間へと姿を変える。しかしその姿には、見覚えがある姿だった。

「テト……その姿は……」
 
目の前に立つテトの姿は、アフィアさんそのものだった。

「勘違いしないで。私とアフィアは無関係よ」

「そ、うだよな」
 
ここまで完璧にアフィアさんの姿になれる物なのか? それとも魔法を使ったのか?
 
テトはブローチに触れるとある魔法書を取り出し俺に渡してくる。

「この本に、雫の魔法を放出する方法が書いてあるのよ」

「そんな事が出来るのか?!」

「もしもの事を考えて以前から探していたのよ」
 
そう言ったテトは俺たちの前に出る。

「詠唱が始まれば魔人ソフィアも詠唱の意味に気づくはず」

「でもどうやってソフィアに近づくんだ? お前だけじゃ流石に無理だろ?」
 
ムニンの言葉にテトは微笑み返す。

「大丈夫よ。だから私はこの姿になったんだから」
 
テトは前を向くと苦しんでいるソフィアに向かって歩いて行く。