空から降ってきたのは傷ついたカレンアだった。

誰かと激しく戦ったのか体の傷は酷く服には血が染みている。

「大丈夫か!」

「う……ん」
 
カレンの愛剣――サファイアにもヒビが入っていた。

氷の女神を受けている魔剣サファイアにヒビが入るなんて……。

魔剣サファイアは氷の女神の加護を受けた魔剣だ。誰がいつ作ったのかも明記されていない。

ここ何百年、サファイアは持ち主にどの種族も選ばず魔法教会が管理していた。

しかしまだ七歳だったカレンがサファイアに選ばれた。どういった経緯で選ばれたのかは詳しく分からない。

サファイアが真にカレンを持ち主として選んだのか、またはカレンには氷結魔法を操る才能があったのか、それを本人に聞いても【覚えてない】の一点張りだった。
 
カレンたちの目の前に翼を広げたソフィアが降りてきた。

「あなたの負けね」

「……っ」
 
カレンとソフィアが戦っていたのか? いったい何の為に……。

「じゃあ約束通りに」
 
ソフィアはカレンたちに手を向ける。

「ま、まずいっ!」
 
今のソフィアは人を殺す事を何とも思っていない。何をするのか分からないんだ。

「とっておきの魔法を使って殺して――」
 
カレンたちに手をかざしていたソフィアは何かを感じたのか手を下ろす。

「……なに?」
 
ソフィアが後ろを振り向いた時、突然ソフィアの体が大きく脈を打った。

「――っ!」
 
ソフィアは声にもならない悲鳴を上げると、頭を抱えてその場に膝をついた。

「やっと始まったか」
 
サルワは壁に手を着いて立ち上がる。