「ソフィア! 何処だ?!」
 
まさか、ソフィアの身に何かが?!

「っ!」
 
そう思ったとき俺は目を開いた。

「あ、アレス!」

「よかった……目を覚ましたのね」
 
俺の側には安堵した表情を浮かべるロキとテトの二人が居た。俺はロキに支えられながら体を起こす。

「何が……あったんだ?」

俺は剣で貫かれた部分に触れてみる。

「あれ……?」
 
しかし剣で貫かれたところは綺麗に塞がっていて血すら流れていなかった。

確か……剣に貫かれて。
 
――死んだはずだ。その証拠に服には俺の血がべっとりと染み付いている。

でも傷だけは綺麗に塞がっている。

「なん、で……?」

「魔人の力が働いたんだ」

「ムニン?」
 
元の大きさに戻ったムニンが頭の上に乗ってくる。

「お前は、大丈夫なのか?」

「まあな。そんなことよりお前のその傷の話だ」
 
ムニンの言葉に首を傾げた。
 
魔人の力が働いたってどういうことだ?

「お前の血には微かだが魔人の力が混じっているんだ」

「っ! だからあの時、混じった奴って言ったのか」

「そうだ」
 
でも何で俺の血に魔人の力が混じっているんだ?

「それはきっと……ソフィアがあなたを蘇生させた時に自分の血を飲ませたのかもしれないわね」

「血を?!」
 
何で血なんかを?

「魔人族が傷を癒やす時、自然治癒が一番良いって言ったの覚えてる?」
 
テトの言葉に軽く頷く。

「魔人族の血には特殊な魔力が流れているの。その魔力は持ち主の体に傷ができた時、傷を癒やす為に魔力を高めて、体の中の細胞たちに治癒を専念させるのよ」
 
おそらくその特殊な魔力が上がることで熱が出るんだろう。魔力を上げて血の流れを良くし体の中の細胞たちに呼びかけるんだ。