「あなたが勝ったら私とお兄様を殺しても良い。でも私が勝ったらお兄様を見逃して」

「氷の女神の加護を持っていても、あなたが私に勝てるとは思えないけど」
 
それでもカレンの瞳は覚悟を持っていた。

どうしてそこまでしてこんな男を守りたいのだろう? もう闇魔法を使っている時点でこいつは人間ではないのに。

守ったところで自分の気持ちを踏みにじられるのがオチだ。でも最初で最後の一勝負、氷の女神の加護がどういう物なのかちょっと気になるのよね。

「……いいよ、勝負してあげる」
 
私は手のひらに黒い玉を作る。

「氷の女神と魔人族……どっちが強いのか確かめましょうか」

「ま、魔人族って……」
 
【魔人族】という言葉を聞いたロキが驚いて目を見開く。

「テト、絶対止めないでね」

「……」
 
テトは頷かなかった。でもテトの許可なんてどうでも良い。こんな楽しい勝負、中々味わえる物じゃないんだから。
 
カレンも再び魔剣を構える。

「じゃあ、始めましょうか」

★ ★ ★

「うっ……」
 
剣に貫かれたところが痛む。体を動かそうにも力が入らない。

俺は……どうなったんだ?
 
近くで魔法同士がぶつかるのを感じる。

ソフィアは……どうなったんだ?
 
そう思った時――

「助けて……」

「――っ!」
 
ソフィアの声が微かに聞こえた。

「ソフィア?!」
 
ソフィアの声がどこからかこだまして聞こえる。しかしその声は徐々に消えかけていた。