よく見るとカレンの背後には業火の魔道士ロキも立っていた。ロキはアレスの姿を見つけると急いで駆け寄る。

「そうだよ。でもあなたと顔を合わせるのは今日が初めてね」
 
私は冷たい目でカレンたちを見下ろした。
 
あと少しでサルワを殺すことが出来たのに邪魔が入ってしまった。

ここへ来るにはもう少し時間が掛かるかと思っていたけど、案外サルワの手下たちはそこまで強くないようだ。

それだったら殺すのに時間は然程掛からないだろう。

「何で止めたの? こいつはアレスを」

「残念だけどあなたに【お兄様】は殺させない」

「……お兄様だって?」
 
サルワは驚いた表情を浮かべながらカレンに目を戻す。

「カレン……」
 
カレンはサルワの前に立つ。

「私は闇の道に進んでしまったお兄様を止める為に教団を追っていたの。でも今までたくさんの罪を重ね続けたお兄様を救うことはもう叶わない。だから生きて償わせます」
 

カレンの言葉を聞きながら私は床に下り立った。そして一気にカレンとの距離を縮める。

「それがどうした!」
 
低い声でそう言い放ちカレンを睨みつける。

「私が殺そうと思った奴は必ず殺す。たとえアレスの知り合いだろうと、私の邪魔をする奴は……全員殺す!」

「……」
 
カレンは何も言わず私の手を掴んだ。

「なら、勝負をしましょう」

「勝負?」
 
カレンの掴んでいた部分が徐々に氷始める。

「あなた……氷の女神の加護を受けてるのね」

「そうよ」
 
私はカレンの手を払い除け距離を取る為に後ろに下がる。