「今は人間族よりもあなたの方が憎い!」
 
私は空に両手を広げる。

「お前は……ここで死ね」

「ま、待て! だったら、その雫を使って生き返らせれば――」
 
私の頭上に大きな黒い塊が膨らんでいく。

「お前が望む世界は私にとっては絶望の世界だ!」
 
アレスが居ない世界なんて、アレスが笑ってくれない世界なんて……いらない。

雫で生き返ったとしてもアレスは喜んでくれない。

大勢の人たちの命を使って自分だけ生きているなんて知ったら、深く後悔して自分から命を断ってしまうかもしれない。
 
黒い塊が教会を包み込むまでの大きさに育つ。

「闇の精霊よ、その力を暗黒の力へと変え、その力を持って憎きあいつを永遠の闇へと誘え」
 
息を吸った私は叫ぶ。

「闇の彼方へ消え失せろ! 永遠の闇(エターナルホンセ)!!」
 
黒い塊をサルワに向けて放った。

「く、くっそおおおお!」
 
黒い塊が教会を包み込もうとした時――

「絶対零度!」

「っ!」
 
すると黒い塊は絶対零度の魔法によって氷漬けにされ、見えない斬撃で粉々に砕かれてしまった。

「私の永遠の闇を……」
 
私は声のした方へと振り向く。

「氷結の魔道士……カレン」
 
カレンは魔剣を構えながら立っていた。どうやらあの魔剣を使って私の永遠の闇を止めたのだろう。

普通の人間族にそんな力が……。

「あなた……ソフィアさんね?」