「アレスが……」
 
テトはアレスに手をかざして、止血しようと治癒魔法をかけている。

しかし傷は中々塞がらないのか血の海はどんどん広がっていく。それを見る度、私の体が脈を打ち体が熱くなっていく。

「アレスが……死んじゃう」
 
雫の器にされることなんてもうどうでも良かった。そんなことよりも、アレスが死んでしまうという気持ちの方が大きくなっていた。

「いや……」
 
私の髪が白銀へと変わり始める。

「アレスが……死ぬなんて……」
 
頬の辺りにある紋章が浮かび上がる。

「アレスが死ぬのは……」
 
目から涙がこぼれた時、私の意識が消えた。

「アレスが死ぬなんて……いやああああ!!」
 
礼拝堂の中に私の叫び声が響き渡る。私の叫び声に気がついたテトたちが顔を上げる。

「こんな……もの!」
 
手首についていた枷を無理やり外し、前に手をかざして私を囲っている結界に衝撃を与え消し去る。

「……」
 
私は視線を下に向けたまま床に下り立った。

「これは……」

「……ソフィア」

「なんて……禍々しい魔力なんだ」
 
【こいつだけは生かすわけにはいかない】――そう自分に言い聞かせゆっくりと顔を上げる。

「ようやく覚醒したんですね」

「……おはよう……人間……そして……死ね」
 
私は真っ赤に染まった瞳でサルワを睨みつけた。