✩ ✩ ✩

アレスの家系は曽祖父の代から“探偵”をやって来ていたと、お父様からそう話を聞いたことがあった。

だからアレスのお父様も探偵をやっていたのだけど、アレスが九歳の時にある事件に巻き込まれて亡くなってしまった。

だからアレスは探偵としての在り方をお祖父様から教わった。

私もよくアレスの家に遊びに行っていたから、お祖父様の顔はよく覚えている。

でも……そのお祖父様も四年前に病で亡くなってしまった。

それからアレスとは四年間会っていない。

会いづらかったし、どんな顔をして話せば良いのか分からなかった。

だから探偵として新聞の表記事に大きく掲載された時は驚いた。

お父様とお祖父様の意思を継いで、数々の難事件を解決して頑張っているアレスの姿を見ることが出来て嬉しかった。

でも同時に置いて行かれた気がした。

私の知らないところでアレスは誰よりも頑張って努力して、そして今の探偵としての自分を作りあげた。

だから私はそんな彼を見て頑張って必死に勉強した。

いつかアレスに追いつくために――

「そうだソフィア。先生があなたに用事があるって言ってたわよ」

「先生が?」

「あなたに頼みたいことがあるそうよ」

そっと魔法書を閉じた私はテトを睨みつける。

「そういうことはもっと早く言ってよ」

「今思い出したのよ」

その言葉に私は軽く目を細めた。

絶対覚えていたでしょ……。

もう少し早く話してくれたら、朝から先生のところに行ったのに。

まあ……あの先生の頼み事なんてどうせ碌でもないことなんだろうけど。

「はあ……食堂が開く前に先生のところに行くよ」

そう言って立ち上がり扉に向かって歩き出す。