「鳳凰の咆哮(フェニックスルジート)!」
 
鳳凰は大きく羽ばたくと俺たちに向かって咆哮を放った。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

「あの馬鹿! 俺たちも居るってこと忘れてないか?!」
 
咆哮が俺たちに近づいてきた時、足元に居たムニンが軽く溜め息を吐く。

「たく……仕方ねえ」
 
瞳を青く輝かせたムニンは小さな姿から大きな狼へと姿を変える。

「お、お前……大きくなれるのか?!」

「当たり前だろ」
 
ムニンは当然の如くそう言うと俺の服の襟元を噛む。そしてその場から教会に向かって大きくジャンプをした。

「うわあ!」

「このまま突っ込むぞ」

「ちょ、ちょっと待て!」

「覚悟を決めなさい、アレス」

「だ、だから待っ――」
 
ジャンプした先にステンドグラスが見えてきてムニンと俺たちは、そのままステンドグラスへと突っ込んだ。

ガラスが割れる音と落下する破片と共に落ち、ムニンは軽やかにその場に着地した。

「あ……危なか――っ」
 
頭を擦りながら前を向いた時、目の前の光景に瞳を丸くした。

床全域には魔法陣が広がっていて真っ赤に光輝いている。そして俺たちが前を見た先には、吊るされているソフィアの姿があった。

「ソフィア!」
 
俺は急いでソフィアの元に駆け寄ろうとした。しかし――

「待ちなさいアレス」
 
テトが俺の前に立ちはだかる。

「何で止めるんだテト!」

「この先の事を考えていないあなたを思って止めるのよ。このままソフィアのところに行ってどうやって助け出すの?」

「それは……」

「まずは落ち来なさい」

「でもソフィアが!」
 
ソフィアを見上げた時その姿を見た俺は絶句した。