「今直ぐ儀式を始めたいところだが、どうも邪魔者がここへ向かって来ているようなんだ」

「邪魔者?」
 
その言葉を聞いて私の中で微かな希望が芽生えた。

もしかしてアレスとテトが?

アレスたちが私を助けに来てくれたんだ。

「探偵以外にも、氷結と業火の二人も一緒か」
 
【氷結と業火】と聞いて私の中である二人の人物が浮かび上がった。
 
氷結の魔道士カレンと業火の魔道士ロキ――
 
でも私はその二人とは面識がない。もしかしてアレスが呼んだの?

「これは早急に、儀式の準備に取り掛かった方が良さそうだ」
 
床へと下り立ったサルワは、数十人の団員たちに命令を下す。

「儀式が終わるまで時間を稼げ」
 
サルワの言葉に頷いた団員たちはぞろぞろと礼拝堂から出ていく。礼拝堂の中に残ったのはサルワと私、またサルワの側近たちであろう三人だけだった。

「魔法陣を描け!」
 
それぞれの位置に着いた三人は真ん中に手をかざすと魔法陣を描き始める。

魔法陣を描き終わった三人はサルワに向き直り、それを確認したサルワは大きく両腕を広げると叫んだ。

「始めるぞ! 世界の創造を!」
 
サルワの言葉と共に私の背後にあった大きな雫の結晶体が青い輝きを放ち始めた。

「っ!」
 
それに気がついた私は後ろを見上げた。

「あ、れは!」

雫の結晶体は天井まで伸びていて、青々と輝きを放っている。

「大いなる力を秘めし雫よ、その力を一つの強大な魔力へと変化させよ!」
 
その時私の胸元に刻まれた魔法陣が不気味な色を放ち始めた。