「なるほど……大体のことは分かった。まずはそのムニンの魔法を使って、忘却の山に入るのね」

「でも急がないとまずいな。ソフィアちゃんがヴェルト・マギーアっていう、魔法を完成させるための鍵だとするなら、早く助けださないと!」
 
カレンはともかく今回ロキがまともな事を言っていることに少し驚いた。

いつもなら【ああ愛しのエンジェル。君を見た時から運命の人だと思っていたんだ】とか、【この業火の魔道士ロキ様が、冷え切った君の心を愛という光で灯してあげる】など、ソフィアが聞いたら鳥肌を起こすくらいの、くさい言葉を言っているはずなんだけど。

「ムニン、俺たちに魔法をかけてくれ」

「分かった」
 
頷いたムニンは瞳を青色に輝かせると、一人ずつ順番に触れていった。

触れられた時、体に魔力が注がれている感覚がして少し不思議な気分になった。

「終わったぞ」

「ありがとう、ムニン。これで仮契約は終わりだな」

「……」

「ムニン?」
 
ムニンはじっと俺を見てくる。
 
俺の顔に何か付いているのか?

「良かったじゃない。ムニンは本契約を考えてくれるらしいわよ」

「そうなのか?」
 
テトの言葉にぎょっとしたムニンは少し照れながら言う。

「ま、まあな。本来なら僕とお前の仮契約は、魔法をかけた時点で終わりだ」

「本当に本契約を考えてくれるのか?」
 
ムニンの体を抱き上げ、お互い目を合わせる。

「お前が僕の望む理想の人間族なら本契約をしてやる」

「理想の人間族?」
 
首を傾げた俺にテトは嬉しそうに横で言う。