「やあ、カレン」

「こんばんは、アレス」
 
カレンは優しく微笑むと、丁寧に挨拶をするように頭を下げる。

「夜遅くにごめんな」

「その言葉は今言うより、さっき言いなさい」
 
カレンは担いでいた大きな袋を乱暴に下ろす。

「それは……何が入っているんだ?」

「これ? これは――」
 
カレンが言葉を続けようとした時、地面に置かれた袋がモゾモゾと大きく動いた。それを見た俺は一歩後ろに下がる。

「な、何が入ってるんだよ!」

「動物かしらね」
 
テトは興味本位で袋に近づく。

「あれ? あなたに使い魔なんていた?」

「ああ……テトの事か? テトはソフィアの使い魔だ」

「ソフィア?」
 
ソフィアの名前を聞いて首を傾げたカレンは、とりあえずモゾモゾと動く袋の口を掴むと開ける。するとそこから見知った男が顔を出した。

「うっへぇ……息苦しい……」

「ろ、ロキじゃないか!」
 
月の光に照らされる金髪の髪は袋の中に入っていたせいで、いつもより乱れていた。

青色の瞳はとても疲れきたように揺れている。カレンはロキを乱暴に扱うように袋から出す。

「ロキって確か……」

「業火の魔道士ロキだ」

再び手帳を取り出したムニンが言う。
 
その手帳に何が書かれているのか、少し気になった。

「いててっ……ほんと酷い事するなあカレンは!」
 
袋から出されたロキの体を見ると、逃げられないようにする為なのか紐で何重にも巻かれていた。