魔人族の血を引く者? 力を持つ者? それが私だっていうの? そんなはずない……だって私は……。

「ア……レス」

名前を呟いたのが最後、私は意識を手放した。

♢ ♢ ♢

「魔人族でも力を使えなければただの人間か……」
 
近くにいた者にペンを返し、彼女の枷を外して体を抱き上げる。

「しかし魔人族の力は必ず目覚めさせる」
 
私はそのまま出口へと向かって歩き出す。

「では、始めるとしよう。世界の創造を」

★ ★ ★ 

「ソフィア?!」
 
走る足を止め忘却の山を見上げた。

「どうしたの、アレス?」

「……いや」
 
ソフィアの声が聞こえた気がしたけど気のせいか?

「何をしているんだ?! 入り口はこっちだぞ」

「あ……ああ!」
 
瞬間転移(テレポーテーション)で忘却の山付近まで俺たちは飛んだ。今はムニンが先頭を走ってくれている。

「ここが入り口だ」

「ありがとう、ムニン」
 
忘却の山の入口に辿り着きカレンの姿を探した。

「カレンって子も来たみたいね」
 
テトが指をさす先に、俺たちは目を向ける。
 
テトの言う通りカレンがこちらに向かって歩いて来る姿が見えた。

少し時間が掛かるかと思っていたけど、どうやら俺たちと同じく瞬間転移の魔法を使ってきたみたいだ。

いつの間にか雲が晴れ雲の間から差し込む月の光が青髪を照らし、優雅に歩くその姿からは、とても魔道士だとは思えない雰囲気を醸し出している。

腰には愛剣の【サファイア】が下げられている。それになぜか肩には大きな袋を担いでいた。