ヴェルト・マギ―ア ソフィアと黒の魔法教団

「んっ……」
 
甘い臭いがする……それに体も酷くだるい。

クラクラしながらも目を開けると視界がぼやけて見える。

「ここは?」
 
体を動かそうとした時、鎖の音が耳に届き手首に目を向けると。

「な、なにこれ……」
 
両手首には鎖の付いた手枷がはめられていた。手首以外に両足首にも足枷がはめられている。

「……」
 
私は今どこに居るの? アレスはどうしたの?

「目が覚めたかな?」

「――っ!」
 
聞き覚えのある声が部屋の中に響いた。私は声のする方へと目を向ける。

「……サルワ」
 
そこには赤黒のマントを羽織ったサルワが、ニヤリと笑いながら立っていた。

「私を……どうするつもりなの? テトは……アレスはどうしたの?!」

「安心したまえ。ちゃんと説明してあげるから」
 
サルワはあるケースから注射針を取り出すと、それを私の首元に突き刺した。

「いたっ!」
 
チクリと首元に痛みが走る。そのままサルワは注射器の中に入っている液体を注入していく。

「な……にこれ?」
 
薬の影響なのか体が徐々に熱くなるのを感じる。息遣いも荒くなってきた。

「君には雫の入れ物になってもらう」

「雫の……入れ物?」
 
確か……アレスが言ってた。

「私の体を……使って人造人間の実験でもするつもり?」

「いや、そうじゃない」
 
サルワは私の胸元の服を掴み思いっきり引っ張ると破り捨てた。

「きゃあっ!」

「可愛い声を出すね」

「この……変態!」
 
両手が使えたらこんな奴殴っているところなのに!