「そんなわけないだろ! 理由は来てから説明するから、とにかく忘却の山の入口に来てくれ」

【……分かった】
 
彼女との通話を終えた俺は鞄に携帯をしまう。

「誰と話していたの?」

「カレンだよ」

「カレン?」
 
その名前に聞き覚えがあるのかテトは少し考え始めた。
 
するとどこから出したのか、手帳も持ったムニンが話し始める。

「【氷結の魔道士カレン】。エアトート魔法学校には在学していないが、その実力は紫雫(むらさきしずく)の生徒たちにも匹敵する程のものらしい」

「名前は聞いた事あったけど、そこまでの魔道士だとは思わなかったわね」
 
テトはそう言うとなぜか疑わしげな目で俺を見上げてきた。

「……なんだよ?」

「別に……あなたにはソフィアが居るのに、他の女の子と仲が良いんだって少し思っただけよ」

「はあ?!」
 
いやいや誤解だ! カレンとは何回か仕事が一緒になったことがあるだけで、テトが怪しむような関係じゃない。

「カレンはただの仕事仲間だ。それに俺はソフィアの事は何とも思っていない」

「僕を呼び出す時に大切な人だって言ってたよな? あれは嘘だったのか?」

「そ、それは違わないけど……」
 
それとこれとでは気持ちが全然違う。確かにソフィアは大切な子だ。

でもそれが好きだっていう感情なのかどうかは俺には分からない。