「馬鹿かあいつ」

「同じ意見よ」
 
二人はそう呟きながら俺の様子を伺っていた。

「そうだ……あいつがいた!」
 
俺は持ってきていた仕事鞄から携帯を取り出す。

「なにそれ?」

「これは携帯型通信用魔道具――通称【携帯】って言って、遠くに居る人物と連絡を取ることが出来る物なんだ」

「あなたの発明品かしら?」

「……普通に販売されてるけど?」
 
いつも口癖のように【ソフィアの使い魔だから、知らないことはないのよ】って、似たようなことを言っているのに、こういう事に関しては知らなかったりするのか?

「そういえば……そんな物があったわね。ソフィアはそんな物使わないから忘れてたわ」

「そんなこと言ってるのお前くらいだぞ? 最近は使い魔たちも使っているし僕だって」

テトはムニンを黙らせるように、肉球を使って再びムニンの口を覆った。俺は苦笑しながらある人物へと電話をかける。

【……こんな夜遅くにいったい何の用なの?】

「あ、出た」
 
時間はとっくに深夜を回っているから電話に出てくれないと思っていたけど、どうやらまだ起きていたみたいだ。

【まあ……あなたのことだから、何か大切な事で電話してきたんでしょうけど。どうしたの?】

「時間がないから集合場所だけ言う。今から忘却の山に来てくれ」

【……っ!】
 
何か飲んでいたところだったのか、忘却の山と聞いた彼女は少しむせる。

【もしかして……あなたが私に聞いてきた事に関しての記憶でも、消そうと思っているの?】
 
彼女の言葉に俺は慌てて否定する。