「それじゃあ始めるわよ」
 
テトは爪を出すと俺の指先を強く引っ掻いた。

「いって! ……いきなり何をするんだ?!」

「使い魔の契約にはあなたの血が必要なのよ」
 
指先から流れる血が魔法陣の上に一滴落ちる。すると魔法陣は眩い光を放ち始める。

「さあ願いなさい。これでムニンが来てくれなかったら、ソフィアを助ける手段は無くなると思いなさい」

「ああ!」
 
俺は目を瞑り光を放つ魔法陣に手をかざす。

お願いだムニン。俺にお前の力を貸して欲しい。助けたい人がいるんだ!

そいつは素直じゃなくて意地っ張りで、自分の決めた事を最後までやり通す力を持った子なんだ。

そう生きてきたせいかもしれないけど、あいつは俺の力になりたいと言ってくれた。

泣き虫で俺の後ろばかり追いかけてきていたあいつが、そう言ってくれた時嬉しかった。そんなあいつは俺にとっては大切な子なんだ。

でもあいつは……ソフィアは俺のせいで、サルワに連れて行かれてしまった。

ソフィアが魔人族の純血種だって知ったあいつが、ソフィアを放っておくはずがなかった。

俺はその可能性を視野に入れずソフィアをここに連れてきた。そのせいでソフィアは連れて行かれた。

これは俺の落ち度だ。こんな俺がお前に力を求めるのは筋違いかもしれない。でも今はお前の力が必要なんだ。

だから頼む! お前の力を貸してくれ!