★　★　★

「これが知恵の女神エアの像か……」

俺はエアの像の前で手を合わせて願い事を呟いた。

「知恵の女神エアよ、どうか俺の願いを叶えてください」

祈りを終えたとき後ろから誰かの視線を感じた。

嫌な気配は特に感じられないから、通りすがりの子が俺のことを見ていただけだろう。

でもせっかくなので誰か見ておこうかな。

そう思った俺は視線を感じた方へと振り返った。

「あいつ……」

そこには凄く見覚えのある女の子が走り去ろうとしていた。

顔立ちはとても綺麗で、髪の色は翡翠色で統一され、癖一つないセミロングを持った女の子だ。

「う〜ん……誰だったかな？　あんな可愛い子、絶対に忘れるはずがないんだけど」

見覚えがあるのは確かだ。

でも名前が思い出せない。

俺は走り去って行く女の子の後ろ姿を見つめた。

「あれ？」

目を凝らしてよく見ると女の子の肩の上には、使い魔らしき黒猫が乗っている。

「使い魔が居るってことは上級生か？」

この学校での使い魔の授業は緑雫になってから学ぶと聞いている。

俺も使い魔は欲しいと思ったことはあるけど、中々儀式を行える時間が取れないんだ。

最近は事件の捜査で何かと忙しいからな。

そんな中、幼馴染の子の父親がこの学校の理事長をやっていて、“息抜きにうちの学校に通ってみないか？”　と誘われた。

しかし今は学校なんかに通っている時間はないしそれどころではない。

一刻も早く今追っている事件を解決に導かないといけないからだ。

だからせっかくの誘いを断ろうと、理事長の元へ赴いた時にある提案を出された。