まさか、そんなことで、わたしに電話を?

「あかりちゃん、今、そんな程度のことでわたしに電話したのかって思った?」

「……」

 呆れて、言葉も出ない。

 仕事をしている間も、リュウヘイ君のことが心配で心配で、今日はミスだらけだったというのに。

 しかもそれでいてなお、残業を断ったというのに。

 明日職場で冷やかな視線を浴びることが確定したっていうのに。

「冗談だよ。

 実は、さっきカーテンを閉めようと思ったら爪でひっかいちゃって。

 あかりちゃんが選んでくれたカーテンだったのに、ごめんね」

「……いいわよ、そんなの。リュウヘイ君は大丈夫なの? 今日一日無事に過ごせたの?」

「ああ、大丈夫だったよ。心配ない。にしても意外だよ、あかりちゃんがそんなに心配性だったなんて」

 そんなの、あたりまえじゃない――その言葉を呑みこんで、わたしは無言で通話終了ボタンを押した。