思い切って残業を断って退社し、ダッシュで駅のホームに飛び込む。

 一刻も早くリュウヘイ君のもとへ帰りたかった。

 わたしが駅の改札を通りすぎたちょうどその時、携帯電話が震えた。

 液晶を確認すると、そこには自宅の電話番号が表示されていた。

 リュウヘイ君だ。

 嫌な予感がする。

「もしもし」
「もしもし、あかりちゃん。もう退社した?」
「ええ。どうしたの? 何か困ったことでもあったの?」