何かトラブルがあった時、犬の手でどうやってわたしに電話をかけるのかという問題もあった。

「そんなの、平気だよ」

 わたしの心配をよそに、リュウヘイ君はこともなげに言った。

「いちど君が、家の電話から君の携帯電話にかけてくれればいいんだ。

 そうしておけば、僕は君に電話したいとき、《かけなおし》のボタン一つ押せばいいだけなんだから」

 こんな発言を聞くと、まるでこの犬は実はリュウヘイ君なのではなく、ただの言葉を話せる特殊な犬で、さもわたしの夫であるかのようなふりをしているだけなのでは、と疑いたくなる。