リュウヘイ君は言う。

「会社の同期にでももし会ったら、自慢してやりたいなあ。犬は気楽だぞってな。

……そうだ、いつか二人でトレーニングを積んで、ペット選手権にでも出ようか」

 わたしの夫ながら、この呑気さには肝を抜かれてしまう。

 これまでマジメに生きすぎた反動なのかもしれないな、とわたしはそっとしておいてあげることにした。

 その夜は、リュウヘイ君を抱き枕にしてベッドに入った。


 月曜日の朝は、心配が募りすぎてわたしも会社を休もうかと思ったほどだった。

 いくらもともとは人間だったとはいえど、リュウヘイ君を夜まで一人(一匹、と表現するのははばかられる)家に残して出勤するのは憚られる。

 まだ犬としてのリュウヘイ君は生まれて三日しか経っていない、いわば赤ん坊のようなものなのだ。
 ご飯のこともあるし、トイレのことだってある。