福崎さんは、すぐに腕を振り払って、東堂とヨージを見て舌打ちをした。
人数的にこれ以上物事を大きくしても不利だと思ったのだろう。
私はと言うと、恐怖で体から力が抜けてしまい、その場にへたりと座り込んでしまった。
「あんた、本当何してんの。バカじゃん……やめてよ」
ムトーがそんな私の肩をさすりながら、今にも泣きだしそうな顔をしている。
確かに私はバカかもしれない。こんなに無計画で感情をむき出しにするなんて。
今更手が震えていることに気づき、私は自分で自分に少し呆れてしまった。
「言っとくけど、先に手出そうとしてきたのは、この女だから」
福崎さんはそう言って、私のことを強く強く睨みつけた。
そんな私たちの間に東堂が立って、私のことを隠すように視線を遮ってくれた。
「そうだとしても、俺はこいつの友達なんで、俺にとってお前が悪だよ」
そんなことを何の迷いもなく言ってくれる東堂の強さと優しさに、なんだか胸が苦しくなった。
ヨージとムトーが私の体を支えて、車へ行こうと小さく囁いた。
残された東堂のことが心配になったが、これ以上福崎さんを煽っても仕方ないと思って大人しく車へ向かおうとした。
その時、一台の車が止まって、中から出てきた人がものすごい形相で私の元へ駆け寄ってきた。その車は、後から合流予定だった麻里茂とハルの車だった。
「何があった⁉︎」
茫然としている私の肩を揺らしているのは、真っ青な顔で余裕のない様子のハルだ。
その顔は、あの襲われかけた事件直後のハルと、全く同じ表情だった。
一瞬、昔の記憶を取り戻したんじゃないかと錯覚するほど、迫真のある心配ぶりだ。
「は、ハル、大丈夫だよ……」
「大丈夫じゃないだろ! そんな青い顔で」
「は、ハルこそ、どうしてそんな……」
感情を共鳴させる為かどうかは知らないが、ハルは私のことを皆の目も憚らずに抱きしめた。
いつもより速いハルの鼓動が伝わってきて、どれだけ私のことを心配して駆け寄ってくれたのか、振動で分かってしまった。
どうしてそんなに、私のことを心配してくれるの?
もう私との記憶は残ってないんだよね?
それなのに、どうしてこんな息を切らしてまで駆けつけてくれるの。
ハルの記憶には残っていなくても、体が覚えているの?
「あれ? 嘘でしょ……ハルなんで未だに持田冬香と会ってんの?」
そんな私たちの様子を見て、福崎さんが煽る様な驚きの声を上げた。その声に、ハルはそっと私の体を離して、声の主を見据えた。
私はというと、また何か嫌味を言われるのか、と覚悟をしたが、福崎さんは本気で驚いた様子でハルを遠くから見つめていた。
そんな福崎さんを見て、ハルは一瞬体を強張らせた……ように見えた。
私のことは忘れているのに、福崎さんのことは覚えているのだろうか。
「あんた達、二度と会わない約束で……」
「……すみません、誰ですか。俺、あんたのこと知りません」
ハルの冷たい言葉に動じないどころか、福崎さんは突然大声で笑い始めた。
今、一瞬聞こえた、“二度と会わない約束”って、どういうこと?
福崎さんは、一体私たちの何を知っているの。
ハルの態度に福崎さんは一瞬言葉に詰まったが、何かに納得したように乾いた笑い声を出して、前髪をかきあげた。
「そりゃそうだよね、あの後、大変だったもんね。あんな過去、思い出させない為には“その手”しかないよね」
「止めなよ! もういいでしょ、福崎!」
そう荒々しく言い放ったのは、まさかのムトーだった。
もしかして、ムトーも何か真実を知っているの……?
私は何も言葉を発せないまま、皆の表情を見回していた。
そんな私たちを見て、福崎さんはゴミを投げ捨てるように言い放った。
「二人揃って記憶喪失とか、まじ笑える」
二人そろって記憶喪失……?
二人って、どういうこと。
全く理解が追いつかない。
「何それ……私も、記憶喪失だってこと……?」
人数的にこれ以上物事を大きくしても不利だと思ったのだろう。
私はと言うと、恐怖で体から力が抜けてしまい、その場にへたりと座り込んでしまった。
「あんた、本当何してんの。バカじゃん……やめてよ」
ムトーがそんな私の肩をさすりながら、今にも泣きだしそうな顔をしている。
確かに私はバカかもしれない。こんなに無計画で感情をむき出しにするなんて。
今更手が震えていることに気づき、私は自分で自分に少し呆れてしまった。
「言っとくけど、先に手出そうとしてきたのは、この女だから」
福崎さんはそう言って、私のことを強く強く睨みつけた。
そんな私たちの間に東堂が立って、私のことを隠すように視線を遮ってくれた。
「そうだとしても、俺はこいつの友達なんで、俺にとってお前が悪だよ」
そんなことを何の迷いもなく言ってくれる東堂の強さと優しさに、なんだか胸が苦しくなった。
ヨージとムトーが私の体を支えて、車へ行こうと小さく囁いた。
残された東堂のことが心配になったが、これ以上福崎さんを煽っても仕方ないと思って大人しく車へ向かおうとした。
その時、一台の車が止まって、中から出てきた人がものすごい形相で私の元へ駆け寄ってきた。その車は、後から合流予定だった麻里茂とハルの車だった。
「何があった⁉︎」
茫然としている私の肩を揺らしているのは、真っ青な顔で余裕のない様子のハルだ。
その顔は、あの襲われかけた事件直後のハルと、全く同じ表情だった。
一瞬、昔の記憶を取り戻したんじゃないかと錯覚するほど、迫真のある心配ぶりだ。
「は、ハル、大丈夫だよ……」
「大丈夫じゃないだろ! そんな青い顔で」
「は、ハルこそ、どうしてそんな……」
感情を共鳴させる為かどうかは知らないが、ハルは私のことを皆の目も憚らずに抱きしめた。
いつもより速いハルの鼓動が伝わってきて、どれだけ私のことを心配して駆け寄ってくれたのか、振動で分かってしまった。
どうしてそんなに、私のことを心配してくれるの?
もう私との記憶は残ってないんだよね?
それなのに、どうしてこんな息を切らしてまで駆けつけてくれるの。
ハルの記憶には残っていなくても、体が覚えているの?
「あれ? 嘘でしょ……ハルなんで未だに持田冬香と会ってんの?」
そんな私たちの様子を見て、福崎さんが煽る様な驚きの声を上げた。その声に、ハルはそっと私の体を離して、声の主を見据えた。
私はというと、また何か嫌味を言われるのか、と覚悟をしたが、福崎さんは本気で驚いた様子でハルを遠くから見つめていた。
そんな福崎さんを見て、ハルは一瞬体を強張らせた……ように見えた。
私のことは忘れているのに、福崎さんのことは覚えているのだろうか。
「あんた達、二度と会わない約束で……」
「……すみません、誰ですか。俺、あんたのこと知りません」
ハルの冷たい言葉に動じないどころか、福崎さんは突然大声で笑い始めた。
今、一瞬聞こえた、“二度と会わない約束”って、どういうこと?
福崎さんは、一体私たちの何を知っているの。
ハルの態度に福崎さんは一瞬言葉に詰まったが、何かに納得したように乾いた笑い声を出して、前髪をかきあげた。
「そりゃそうだよね、あの後、大変だったもんね。あんな過去、思い出させない為には“その手”しかないよね」
「止めなよ! もういいでしょ、福崎!」
そう荒々しく言い放ったのは、まさかのムトーだった。
もしかして、ムトーも何か真実を知っているの……?
私は何も言葉を発せないまま、皆の表情を見回していた。
そんな私たちを見て、福崎さんはゴミを投げ捨てるように言い放った。
「二人揃って記憶喪失とか、まじ笑える」
二人そろって記憶喪失……?
二人って、どういうこと。
全く理解が追いつかない。
「何それ……私も、記憶喪失だってこと……?」