「次はもう教えてあげないよ。今回だけ特別」

えっ、と優海が目を見張った。

その間抜け面に向かって冷ややかに告げる。

「今後は私は教えないから、優海が自力で乗り越えて。私が助けるのは今回が最後だから!」

ええーっ、と優海は泣きそうな顔をした。

「なんでだよー」
「だって、いつまで経っても私が助けてあげるわけにはいかないでしょ。もう高校生なんだから、自立! 分かった?」
「……はーい」

あからさまにしゅんとしている優海を、あえて励ましたり慰めたりはしない。

私は「じゃあね」とそっけなく告げて、彼のもとを離れた。

さっさと帰り支度をすませ、鞄をもって立ち上がる。

見ると優海はバスケ部の仲間に囲まれて楽しそうに笑っていた。

きっと、みんなで赤点がなかったことを確認しあって喜んでいるのだ。

よかった、本当に。