しばらく首をひねっていた優海が、はっと気づいたように顔をあげた。

「まさか……まさかとは思うけど」
「え、な……なによ」
「他に好きな男がいるとか言わないよな!?」

見当違いすぎる問いに、呆れて言葉も出ない。

「何言ってんだか……バカらし」

「だって、そうでも考えなきゃ、急にダイエットとか言い出した理由が分かんないんだけど! 俺は今のままの凪沙がいちばん好きだし、やせなきゃいけない理由わかんねーんだけど!」

「あーうるさいうるさい!」

「どこのどいつのためにやせようとしてるんだよ凪沙ー!」

本当に泣きそうな顔をしている優海の頭をぺしんと叩く。

「うるっさい! ダイエットは誰かのためにするもんじゃないの、自分のためにするもんなの! モテるためとか男のためとかじゃないから!」

思いつきでそう言うと、いつの間にか話を聞いていたらしい周りの女子たちから拍手が上がった。

「凪沙かっこいー、名言!」
「そうだよねー、ダイエットは自分のためだよね」
「私もがんばろー」

図らずも尊敬の眼差しを向けられて微妙な気持ちになっていると、優海から「ごめん」と謝られた。