「……おかしい!」
「え?」
「おかしい。どっちも凪沙の大好物の菓子じゃん。いつもなら、甘いものは別腹って言ってすぐ食べるのに、おかしいぞ」

きっぱりと断言されて、返答に困る。

しまった、説得力に欠ける理由だったか。

たしかに私はチョコレートが大好きで、どんなにお腹いっぱいでも、チョコレートならいくらでも食べられるのだ。

「……いやあ、実は、ダイエットしようかなと思ってて」
「はっ!?」

適当な理由を口にすると、優海は今度は大げさに目を丸くしてのけぞった。

「なんだってー!? 凪沙がダイエット!? 今までそんなこと言ったことないのに!!」

あまりにも優海が驚くので、私は今まで女磨きを怠けてだらだら過ごしてきた自分を恨んだ。

「……うるさいなあ。私だって体形くらい気にしてるよ。ほら、もうすぐ夏休みだしさあ、水着の季節じゃん、今年はやせたいなと思って」
「えー!?」

優海がおかしいおかしいと繰り返す。

ほんと、こういうときばっかり無駄に鋭い。

「水着って……今までも普通に着てたじゃん」」

私たちは海の近くに住んでいるので水着で泳ぐことはよくあるけれど、鳥浦には人の集まる海水浴場などはなくて、いつも優海と二人で泳ぐだけだったから、しまりのない水着姿を見られることを気にする相手もいなかった。

年頃の乙女らしく少しは気にするべきだったか、と今さら悔やんでもしかたがない。