そんなことはない。

私は真面目すぎて頭が固いし、気が強くて怒りっぽいし、人当たりのいい態度や笑顔も苦手なので、よく恐いと言われる。

そのうえ今なんて、自分に都合が悪いからうそまでついてしまった。しかも二回も。

それなのに、たちの悪いうそをついた私にも美紅ちゃんは怒ることなく、むしろ笑って「面白い」とか「ほっとした」とか言ってくれたのだ。

予想していた通り、話に聞いていた通り、本当にいい子だ。

そのことにほっとすると同時に、ちくりと胸に痛みが走った。

その痛みを忘れるため、私は最大限の笑みを浮かべる。

「豊原さんこそ、優しいね。怒らないでくれてありがとう」

私がそう言うと、彼女はまた気まずそうに目を逸らした。

「あの……本当に、ごめん。日下さんがいるって分かってるから、告白しようとか……付き合いたいとか、全然思ってないから」

せっかく話題を変えたのに、美紅ちゃんはまた優海の話に戻してしまった。

どんな顔をすればいいか分からなくて、私もうつむく。

「ただ、さっきはたまたま、本当にたまたま、体育館に忘れ物しちゃって取りに行ったら、バスケ部が練習してて、思わず見ちゃって……」

彼女が本当に申し訳なさそうに言うので、私のほうが心苦しくなってしまう。