「待って……ちょっと、話が、あって……」

息が切れて上手く話せない。

彼女は戸惑ったようにちらりと私を見てから、周囲にぐるりと視線を巡らせた。

優海を探しているらしいと気づき、慌てて謝る。

「あ、ごめん。優海って言ったのは、うそ。あいつはいないよ」
「え……っ」

驚いたように息をのんでから、彼女は頬をかあっと赤く染めた。

「あ……っ、ご、ごめんなさい……!」

見たこともないくらい真っ赤な顔を両手で隠すように押さえ、今にも泣きそうな声で謝ってくる。

私はふるふると首を横に振った。

「いやいや、なんで謝るの。み……豊原さんは何も悪いことしてないじゃん」

いきなり美紅ちゃんと呼ぶのは慣れ慣れしいかと思って、豊原さんと言い直す。

名字はすでに真梨経由でリサーチ済みだった。

「あ……うん、でも……え? 怒ってるんじゃないの?」

美紅ちゃんは私の顔色を窺うように上目遣いで見上げてきた。

やっぱり可愛いな、この子。くっきり二重にぱっちりと大きい目と、色白な肌にぷっくりと赤い唇。下手なアイドルよりも可愛い。

「怒ってないよ。ごめん、地顔がきついから恐く見えるけど、怒ってないから」

へらりと笑って言うと、逆に彼女のほうが恐縮したように肩を縮めた。

なんだか小動物みたいな子だ。

「そんなこと……きつくも恐くもないよ。ただ私が、やましいことがあったから、日下さんに見られて焦っちゃって」