「おばあちゃん、行ってくるねー」

薄暗い台所で朝食の後片づけをしている背中に声をかけると、おばあちゃんが振り向いて、「行ってらっしゃい、気をつけて」と微笑んだ。

はーい、と答えながら、思う。

おばあちゃんは、あんなに小さかっただろうか。
おばあちゃんの背中は、あんなに曲がっていただろうか。
おばあちゃんの腕や脚は、あんなに細かっただろうか。

毎日一緒にいるから意識していなかっただけで、時間は確実に流れていて、おばあちゃんは確かに少しずつ衰えていっている。

私はそれを、もしかしたら分かっていたのに見て見ぬふりをしていたのかもしれない。

沈んだ気持ちを奮い立たせるために、わざと溌剌とした足どりで玄関に向かい、奥に向かってもう一度「行ってきまーす」と大声で言って勢いよく外に飛び出した。