私は慌てて今朝配られた範囲表を見た。

そこには、『化学 教科書三十四ページまで』とはっきり書かれていた。

しまった、と内心で舌打ちしてから、笑み浮かべて真梨を見る。

「ごめーん、私の記憶違いだったみたい。三十四って書いてあった」
「あ、そっか、ならよかった。ていうか、範囲縮まってよかったねー」

何も疑ってはいない様子の真梨にほっとしながら、私は「うん、ほんとにね」と頷き返した。

それから心の中で、危なかった、とため息をつく。

油断してはいけない。

この程度のことならばいくらでもごまかしはきくけれど、もっと致命的なミスを犯してしまったら大変だ。

特に、優海の前では気をつけないと。

彼は能天気なようで、私のことに関してはやけに鋭いところがあるから。

気を引きしめろ私、とぺちぺち頬を叩いていると、 真梨が「気合い入ってるねえ凪沙」と笑った。