説明を始めようとしたとき、廊下から足音が聞こえてきて、化学の授業担当の先生がプリントの束を持って入ってきた。

「勉強の邪魔してごめんな、ちょっと入るよ」

なんだろう、と見ていると、先生はプリントの一枚を掲示板に貼りはじめた。

「いやー、申し訳ないんだけど、進みの遅れてるクラスがあって、範囲が少し狭くなったんだ」
「あ、そうなんですね」
「また明日、授業でも告知するけど」

真梨が嬉しそうに笑いながら私に「やったね、狭くなるって」と耳打ちして、立ち上がる。

「ちょうど今、化学の勉強してたんです。凪沙に教えてもらいながら」
「そうか、ちょうど良かったな」

うんうん、と頷いてから、先生は教室を出ていった。

真梨は黒板の横まで歩いていき、掲示されたプリントを見る。

「何ページまでになったのかな? ……って、あれ?」

首を傾げる真梨を見て、どきりとする。

彼女は目を丸くして振り向いて、

「ねえ、凪沙。新しい範囲、三十二ページまでってなってる」
「えっ……っ」