放課後、私たちは約束通り勉強をするために教室に残っていた。

「よし、始めよっか」
「うん、よろしくお願いします、凪沙先生」
「先生やめて……」
「あはは」

真梨がおかしそうに笑った。

このほんわかした笑顔にはいつも癒されている。

真梨と友達になれてよかったなあ、としみじみ思った。

全体把握のため、まずは教科書の基本問題を解いていくことにする。

「範囲どこまでだっけ?」

真梨に訊ねられて、私は記憶を頼りに答える。

「三十二ページまでだよ」
「わあ、凪沙覚えてるの? さっすがー」
「いや、たまたまね。けっこう範囲広いよね」
「ほんと、大変だよー」

しばらく各自で問題を解いていると、なかなかペンの進まない真梨ががばっと机に突っ伏した。

「はー、やっぱり苦手だなあ化学……分からない問題ばっかり。赤点とったらどうしよう」

真梨は眉間にしわを寄せて難しい表情をしている。

「でも真梨、数学はそんなにだめじゃないでしょ? コツさえつかめばなんとかなるよ」
「そうかなあ?」
「そうそう。化学式の計算の基本的な考え方はね……」