「はい、じゃあ、テスト範囲配るぞー」

朝のホームルームで、来週から始まる一学期の期末考査の範囲表が配布された。

みんなが一斉にプリントに目を落とし、「英文法範囲広すぎ!」、「日本史やべー」などと口々に話しはじめる。

私は前から回ってきたプリントをちらりと見て、クリアファイルの中にしまった。

「はあ~、とうとうテストかあ」

ホームルームが終わったあと、優海が机に突っ伏してうなだれる。

「部活は明日から休みになっちゃうし、勉強しなきゃなんねーし、最悪だ~」

私はその頭をぽこんと叩き、「甘えるな!」と叱咤する。

「その大好きな部活を夏休みに思う存分楽しむために、勉強がんばんなきゃいけないんでしょ」
「だよなー。赤点とったら補習で部活行けないし、夏の大会も出してもらえないし、地獄だー」
「そうそう。地獄に落ちないために、せいぜいがんばんなさいよ」

へーい、と優海は返事をしたけれど、その気合いの抜けっぷりに不安が募る。

「……ねえ、優海。今日、数Ⅱの予習課題あったよね? ちょっと見せて」
「えっ、なんで?」
「理解度の確認」

数Ⅱは他のクラスよりも進度が早くて、もう試験範囲の授業が終わったから、テストに向けての復習が始まっていた。

今日はその初回で、範囲全体を網羅した問題が並んだプリントが課題になっていた。