でも、だからこそ、私はやらなくてはならないのだ。

『あれ』はいつだったっけ、と思いを巡らせて、意外と期日が迫っていて時間がないことに気がつく。

行動を起こすなら、早いに越したことはない。

「……ねえ、真梨」

化学室に入って所定の席についてから、私は小声で真梨に話しかけた。

もちろん、優海がクラスの男子たちとバカ話をして盛り上がっていてこちらを見ていないことを確かめてから。

「ん? なあに?」
「あのさあ……美紅ちゃんと仲の良さそうな子で、真梨が話せる子っていない?」

唐突な話に、真梨がきょとんと目を丸くする。

それから怪訝そうに眉を寄せて、

「……もしかして、戦闘開始?」

と物騒なことを言い出した。

一瞬なんのことだろうと不思議に思ってから、真梨が何を言わんとしているのか理解した。

どうやら彼女は、優海に密かに想いを寄せているらしい美紅ちゃんに私が嫉妬して、恋のライバルと戦おうとしている、と考えたらしい。

「……いやいやいや! 違うよ、違うからね?」

私は声をひそめながらも必死に身ぶり手ぶりで否定する。

「そういうわけじゃなくて、なんていうか……美紅ちゃんってどんな子なのかなって思って、ちょっと知りたいなというか、仲良い子から話聞いてみたいなー、みたいな?」

自分でも意味不明なことを言っている自覚はあったけれど、真梨はさらに理解不能という表情をしている。

でも、心優しい彼女はよく分からないながらも私の言葉を信じてくれたらしく、「そういうことなら」と頷いてくれた。