中学のころも、優海が実は何回も告白されていることを知っている。

それ以外にも、誰々ちゃんが優海のこと好きらしいよ、という噂を女子たちから何度も聞かされた。

いちいち言わなくていいよと内心呆れたものだ。

彼女である私にわざわざ彼氏の優海を好きな人がいると聞かせるなんて、性格が悪い。

もしかしたら妬みだったのかもしれない。

優海は中学のころから隠すことなく私のことが大好きだと公言していたから。

そうすることで私が女子たちから白い目で見られることもあるなんて、彼には想像すらできないのだろう。

人を羨んだり妬んだりすることのない優海だからこそ、そういう複雑な女心が分からないのだ。

まあ、そこが優海のいいところでもあるんだけど。

「……ねえ、真梨」

呼びかけると、真梨が首をかしげた。

「あの子さあ……美紅ちゃん、だよね」
「あー、うん。そうだよ」
「どんな子か知ってる?」
「ううん、接点ないから分かんない」
「そうだよね、やっぱり」

ふうっと息を吐いてから、あのさ、と続けようとしたとき、

「凪沙ー?」

突然上から声が降ってきて、私は目をあげた。

上の階段の手すりから優海が見下ろしている。

「どしたん?」
「……え? 何が?」
「いや、後ろ見たら来てないから心配になって」
「あー……うん」