優海はしばらく眉根を寄せてじっと私を見てから、ゆっくりと口を開いた。

「俺の人生は凪沙がいないと成り立たないから、凪沙抜きで将来を考えるとか、ない。無理。俺の人生は凪沙込みで考えるしかない」

意外にも平静で真剣な表情で答えられて、私は言葉をのみこんだ。

「……あっそ」

そう返すのが精いっぱいだった。

二人の間に微妙な空気が流れた瞬間、今までみんなと顔を寄せ合って優海のプリントを読んでいた真梨がこちらを見た。

「すてきな人生設計だね。ほんとラブラブだねえ」

ほんわかした笑顔で言われて、私も表情を忘れていた顔に笑みを浮かべた。

「すてきかねえ？ 恥ずかしいよ私は」
「そう？ うらやましいけどなあ。二人が将来夫婦になっても今みたいに仲良しなの想像できるもん」

いつもの私なら、『優海みたいな能天気なやつと夫婦とか考えられない』とか、『ぜんぜん仲良しじゃないし！』とか、きっと下手な照れかくしの憎まれ口を叩いていただろう。

でも今日は、うまく言葉を出すことができない。

「うん……」

とあいまいな返事だけをして、私はお弁当を箸でつつくことしかできなかった。