「ええ~……そうか、確かに……」
「絶対再提出になるよ。書き直し! 新しい紙もらってきなさいよ」
「はあ……」

優海はうなだれて力なく頷いた。

これで安心、と思ったのも束の間。

「でもでもでも! 凪沙との未来予想図に関しては完璧だろ!」

まだ食い下がってくるか、と私は肩をすくめた。

「いやー、仕事も決まってないようなやつとは結婚できないな」

適度に笑いを浮かべながら、でも冗談とも本気ともつかないように、私は言った。

「まじかー!」と優海が叫んだ。

それを聞きつけて、まわりの人たちがなんだなんだと集まってくる。

優海は「俺の将来設計!」と笑って彼らに紙を渡して、それから私に向き直った。

「俺は凪沙と結婚したい! 凪沙と幸せな家庭を築きたい!」

そんな恥ずかしい宣言にも、すでに慣れきっているクラスメイトたちは何も反応せず、うひひと笑いながら優海の作文を読んでいる。

私は肩をすくめて首を振り、

「私との将来がどうとかより、自分の人生としてちゃんと考えなよね。これはあくまで一般論、一般論だけど、私と結婚するかどうかなんて分かんないじゃん。何年も先のことなんだし。だから、優海がどんな仕事をしてどんなふうに生きていきたいか考えなきゃだめだよ。私抜きで、ね」

淡々とした口調を心がけて言った。