「あー、あれなー。みんなめちゃくちゃ笑うから恥ずかしかったな。で、正解はなんだったっけ?」

呆れ返った私は弁当箱のふたで優海の頭をぱこんと叩く。

「インフレーション! もう、いいかげん覚えなよ。期末テストの範囲だからね? 分かってる?」
「うひー、そうだった、テスト! がんばらないとなー」

口ではそう言いつつも、そのへらへらした表情には全く危機感がない。

これは本腰を入れて鍛えないと。ここは、心を鬼にして。

「その締まりのない顔はなんだ!? 気合いが足りない! ふざけんのもたいがいにしろよ!」

思いっきり眉根を寄せて、できる限りの厳しい口調で言ってやると、

「わー、凪沙がこわい~」

と優海が口をへの字にした。

真梨と黒田くんがおかしそうに笑っている。

私は肩の力を抜いて、

「優海のことはもういいや。ねえ、真梨と黒田くんは進路希望書けた?」

ひでー、と嘆いている優海をよそに、二人に訊ねる。

「俺は体育の先生になりたいから、教育学部の体育科」

黒田くんが即答した。

「わあ、さすがだねえ、しっかりしてるー」

真梨は黒田くんに向かってぱちぱちと手を叩いた。

黒田くんが「なれるか分かんないけどさ」照れくさそうに笑う。