こみあげてきたものをのみこみ、ねえ、と優海に声をかける。

ん、と彼は目をあげた。

「写真撮ろっか、記念に」
「記念?」
「そ。夫婦みたいに食事した記念、みたいな」

自分で言って恥ずかしくなってきたけれど、優海はにっこり笑って「いいなそれ」と頷いた。

食卓と自分たちが写るように位置を調整して、携帯電話のインカメラで撮影した。

「ん。いい感じに撮れた」
「そっか、よかった」
「ありがとね。さ、食べよっか」
「おう」

優海が食事を再開する。

ご飯をかきこんで茶碗を下ろしたとき、唇の横に米粒がついていた。

「あ、優海、ご飯粒ついてるよ」
「ん?」
「子どもみたい」
「高校生だよ!」
「はいはい。早く取りなよ」
「ん。どこ?」

「ここ」と自分の頬を指して教えたけれど、「ここ?」と首をかしげる優海の指は、うまくその場所にたどり着かない。

しょうがないなあ、と腰をあげて、前のめりになって米粒をとってあげた。

「ありがと凪沙! へへ、今のもなんか夫婦っぽいなー」
「夫婦ってより、母親と幼稚園児だよ」
「ええーっ」
「あはは」

笑顔で向かい合いながら、ご飯を食べる。

明るい部屋、頬をなでるそよ風。

心地よさと少しの切なさに、私は目を細めた。