そして、写真立てに入った三枚の写真。

――優海の家族だ。

明るい笑顔のお父さんと、優しい笑顔のお母さん、そして人懐っこい笑顔の弟、広海(こう)くん。

みんな優海に似ている。

もう、この世にはいないけれど。

両親と子どもがいるという『普通の家族』には恵まれなかった私が、家庭のぬくもりを求めてここに訪ねてくると、いつもにこにこと温かい笑顔で迎え入れてくれたのを今でも覚えている。

私は彼らが大好きだった。


ろうそくに火を灯し、線香の先に火をつけて、香炉に立てる。

ばちを手にとってお鈴(りん)を鳴らす。

手を合わせて、目を閉じる。


どうか、安らかにお眠りください。

どうか、優海を守ってあげてください。

今までよりもずっと真剣にお祈りを捧げた。


家の中は、優海ひとりでは手が回らずに片付いていなかったり埃がたまっている場所もあるけれど、この仏間と仏壇だけはいつもとてもきれいにしてある。

そこに優海の家族への思いが表れている気がして、どこか切なくも感じた。

彼らが亡くなってしまってからも、優海は変わらず明るく元気な笑顔を絶やさなかったけれど、寂しくないわけがない。

だから私もおばあちゃんも、近所のみんなも、優海のことはいつも気にかけていたし、事あるごとに食べ物を差し入れたり様子をたずねたりしていた。

それでも、本当の家族にかなうわけはないのだけれど。