「ごめんね、急に。優海が部活に行く前に渡さなきゃと思って」

包みを差し出すと、優海が中身を見て「わあ」と声をあげた。

「タエさんの飯だー、やったあ」
「ちょっといつもより多いんだけど」
「全然いいよ、ってか嬉しい! これなら明日まで食うもん困らないな」
「ちゃんと冷蔵庫入れとくんだよ、傷んじゃうから」
「うん。ちょうど昼飯にしようと思ってたし、さっそく食おうかな。あ、凪沙あがってよ、麦茶くらいしかないけど」
「じゃあ、お言葉に甘えて」

お邪魔します、と言いながら、庭から縁側に上がって茶の間に入る。

うちと同じように年季の入った食卓。畳の上に無造作に置かれた一枚の座布団。

殺風景な廊下と、その先にある薄暗い部屋たち。

優海の家は、静かだ。

一人暮らしだから当たり前なのだけれど、それを差し引いても、どうしようもなく静かで寂しい感じがする。

その寂しさを少しでもかき消したくて、暇さえあれば遊びに来ているけれど、染みついた暗さと沈黙は容易には振り払えなかった。

優海が台所でグラスに氷を注ぐ音がする。

私は「奥にいるね」と声をかけて、廊下に出て仏間に入った。

黒と金の立派な仏壇。

供えられた花と食べ物。