駐輪場に向かって一直線に歩いていく。

優海は私の横に並んで歩きながら、じっとこちらを凝視している。

「なによ。顔になんかついてる?」
「いや? いつも通り可愛くてきれいな顔だよ」
「……ばか」

さらりと言われて、いつものことながら照れくさくて思わずそっぽを向いた。

それでも優海はちっとも視線を外さない。

「もう、なによ。そんな見ないでよ」
「……なーんかおかしいんだよな。今朝から、なんか変! 様子がおかしい。凪沙が変!」
「変、変って、失礼な」

また茶化すように笑ってみせたけれど、やはり空気は硬いまま。

優海に嘘はつけない。十年間、ほとんどの時間を一緒に過ごして、その結びつきの強さはもう家族のようなものだから、ごまかしがきかないのは仕方がない。

「……ちょっとね、嫌な夢を見ちゃって。それで、色々考えてたから、いつもと違うのかも」

苦し紛れにそう言うと、優海が目を見張った。

「嫌な夢? どんな?」
「……悲しくて、怖い夢。内容は、思い出したくないから、言いたくない」

優海が足を止める。

私も立ち止まって彼を見上げた。とても苦しそうな表情をしている。

次の瞬間、がばっと開いた優海の腕に抱きすくめられた。