優海がにこにこしながら靴箱の扉を開ける。

ほんと嬉しそう、と思うと同時に、ふと思いついて、私は鞄から携帯電話を取り出した。

優海にばれないようにカメラを起動する。

そして、満面の笑みの横顔に向けて撮影ボタンを押した。

シャッター音が鳴る。

優海が目を丸くして振り向いた。

「えっ、なになに、撮った?」
「うん」
「ええーっ、なんでなんで? てか、すげー変な顔してた気がする!」
「うん、お察しの通り、めっちゃ変な顔してたよ」

からかうように言って携帯電話をしまい、私は上履きをローファーに履き替えた。

「まあ、別にいいけどさー。どうせ大した顔じゃないし。でも、なんで急に写真なんか撮ったんだよ、珍しい」

「……別に、意味なんかないけど」

少しうつ向いて答えた瞬間、自分の靴をうつしていた視界に、突然優海の顔が現れた。

「わっ、びっくりしたー」

とがめるように言っても、彼は黙って私の顔を覗き込んでいる。

「……なによ」

訊ねても答えはない。ただ、静かな視線が私の目をとらえるだけ。

「そんなに見られたら照れちゃうんですけどー」

おどけたように言って、私はさっと踵を返した。そのまま外へと向かって歩き出す。