優海と私は、クラス中の、というか学年中の公認の仲だ。

私は本当はあまり知られたくなかったのだけれど(だって付き合っていることを知られているとみんなの前でどんな顔をして話せばいいか分からない)、バカ正直な優海が四月のいちばん最初のホームルームで、

『鳥浦中出身の三島優海です。趣味は凪沙で、好きな四字熟語は日下凪沙です』

というアホな自己紹介をしたので、すぐにクラスメイトだけでなく学年のみんなへと知れ渡ってしまったのだ。

優海は部活でも隠さずに私のことを話しているようなので、たぶん上級生たちにも知られている。

初めは周囲の視線が気になって恥ずかしくて、誰かがいるところでは必要以上に優海と話さないようにしていたけれど、あまりにもあっけらかんとしている彼を見ていたらバカらしくなってきて、今は私もこそこそするのはやめてしまった。

とはいえ、国語表現の授業で『凪沙ちゃんとっても大好き愛してる』というバカみたいな俳句を作ってみたり、英作文の授業で英語日記の発表をしたときに全てのページが『I love Nagisa』から始まっていたりしたのは、あまりにも恥ずかしかったのでさすがに怒ったけれど。

今だって、「今日は凪沙と放課後デートだぜー、いいだろー」と男子たちに自慢げに言いふらしていて、恥ずかしいことこの上ない。