泣きながら、凪沙は穏やかに笑っていた。

『だから、優海も、あんまりいつまでも悲しんでちゃだめだよ』

でも、声は隠しようもないほど震えている。

俺は携帯電話を両手で強く握りしめた。

こんな画面、なくなればいいのに。

この中に入って、凪沙を抱きしめたくて仕方がなかった。

息もできないくらい、震えも止まるくらい、強く強く、抱きしめてあげたい。

ごめん凪沙、側にいてやれなくてごめん、と心の中で謝った。

『優海、大好き』

凪沙が明るい声で言った。

それから胸許のネックレスにそっと指先で触れる。

『優海がくれたこの幸せの桜貝、効果抜群だったね。私は優海がずっと一緒にいてくれて、私のこと好きになってくれて、死ぬほど幸せだったもん。桜貝の言い伝えは本当だったね』

凪沙は桜貝をつまんで持ち上げ、こちらに向けた。

『これは優海に返すから、今度は優海が幸せになって。私のことなんか忘れて、優海が誰より幸せになるのを願ってるよ。幸せにならなきゃ許さないからね』

きっぱりと言ってから、凪沙は少し唇を震わせて、今度は泣きそうな声で言った。

『……でも、たまには思い出してくれたら、嬉しいな……。たまにでいいから。わがままでごめんね』

最後は声にならなかった。

『……優海、愛してる。ばいばい』

凪沙は満面の笑みで涙を流しながら手を振り、動画はそこで終わった。

真っ暗になった画面に、涙でぐしゃぐしゃになった俺の顔が写っていた。