かっと目の奥が熱くなって、涙が滝のように流れる。

「なんで凪沙まで……」

俺は胸をかきむしりながら床に這いつくばった。

「優海くん……」

タエさんが縁側から部屋に上がってきた。

大声で泣きわめく俺の背中を、さするように何度も撫でてくれる。


タエさんだってつらいはずだ。

それなのに慰めてもらうのは違う、分かっていたけれど、こみあげてくる涙を止めることなんてできなかった。

何もかも失ってしまったけれど、俺には凪沙がいてくれた。

家族がみんな死んでしまって、砂漠の真ん中にひとり取り残されたような絶望に襲われていたときに、凪沙は俺が立ち直るまでただひたすら側にいてくれた。

俺にとって、凪沙は真っ暗闇に射した優しい光で、救いの光、そして希望の光だった。


凪沙だけはずっと一緒にいられると思っていた。

凪沙だけは失いたくなかった。

それなのに、また、俺の大切なものは、この掌から零れ落ちてしまった。

もう二度と失くしたりしないように、絶対に離れたりしないように、大切に大切に握りしめていたはずなのに、砂のようにあっけなく、指の隙間から零れ落ちてしまった。