凪沙の葬式が終わって、家に戻ってきてから、一歩も動けなくなった。

町の人も、学校の友達も、みんな心配してくれていたから、大丈夫な顔を見せなきゃと気を張っていたけれど、ひとりになった瞬間、もうだめだった。

糸が切れたように身体に力が入らなくなって、床に崩れ落ちて、ずっとこうしている。

腹も減らないし、喉も渇かない。

このままでいたら、いつかからからに干からびて、風に乗って凪沙のところまで行けるかもしれない。


ぼんやりとそう思っていたとき、縁側の窓がノックされる音がした。

見ると、大きな風呂敷包みを抱えたタエさん――凪沙のばあちゃんだった。

「……優海くん」

それだけ言って、うつむいてしまった。

その拍子に、タエさんの涙がぽろぽろと零れて床に落ちる。

最愛の孫を、たったひとりの家族を、タエさんは失ってしまったのだ。

俺は何も言えなくて、うん、とだけ答えて視線を戻した。


そのとき、飾り棚の上の写真立てが目に入った。

父ちゃんと母ちゃんと俺と広海と、凪沙。

もう俺しか残ってないんだ。


そう思った瞬間、わけの分からない感情が爆発した。

悲しみ、怒り、苦しみ、絶望。

そういうものがごちゃまぜになった感情だった。

「なんで……!」

呻くように言って、俺は床にうずくまった。

「なんでだよお……!」