ねえ、優海、と心の中で呼びかけた。

優海、ごめんね。

嘘だったんだ。

祭の日に死ぬって言ったけど、本当は今日だったんだ。

私が死ぬって言ったら、きっと優海は助けようとするだろうなって、運命を変えようとするだろうなって、思ったから。

ごめんね。

優海が私の言うことは全部信じるって分かってから、それを逆手にとって嘘ついちゃった。

何度も言ったでしょ?

そんなに簡単に信じてたら、いつか悪いやつに騙されちゃうよって。

あれ、私のことだったんだ。


騙してごめんね。

だって、神様に言われたんだ。

運命は変えちゃいけないんだって。

死に直すことはできるけど、死ぬ運命を変えることは許されないんだって。

難しいことは分からないけど、そんな大それたことをしたら、死ぬはずだった私が生きつづけたりしたら、ひずみが生まれて、周りにまで悪影響を及ぼすって。

それがもしも、優海やおばあちゃんや、学校のみんなに及んでしまったら?

そんなの、だめでしょ。

私が生きたせいでみんなに迷惑がかかるなんて、だめでしょ。

もしも優海が私を助けようとしたら、優海が死んじゃうかもしれない。

そんなの耐えられない。

私は十五歳の夏に死ぬ運命だった、それだけのこと。

それなのに、もう一度この夏を生きて、優海と少しでも長く過ごすことができた。

それだけで、私はじゅうぶん。

もうじゅうぶん幸せだ。