町のみんなが寝静まり、鳥浦が闇と沈黙に沈むころ、私は部屋で龍神祭の提灯と向き合っていた。

本番はもう明後日、今夜には絵付けを終わらせなければいけない。

中学のとき使っていた絵の具入れを持ち出してきて、パレットに青の絵の具を絞り出す。

それから水を含ませた筆で、提灯の和紙に色をのせていく。

描くものは決まっていた。

海の絵だ。

コバルトブルーの海、白い波、水色の空、白い雲。

いつも私を見守ってくれていた、穏やかで優しい海。

それから、ピンク色の絵の具を筆にとって、桜貝の絵を描き、さらに文字を書き加えた。

これで完成だ。


提灯の中に、火を灯した蝋燭を入れて、照明を消す。

真っ暗闇の中で煌々と光を放つ温かいオレンジ色の灯火。

そして浮かび上がる提灯の絵。


うん、いい感じ、と私はひとり微笑む。

今まででいちばんの出来だった。