「ただいまー。遅くなっちゃった」

家に帰って、居間でテレビを見ていたおばあちゃんに声をかけた。

「おかえり、なぎちゃん。優海くんと出かけとったんでしょう」
「うん。帰りに寄り道して遅くなっちゃった、ごめんね」
「いいよお、そんなん。楽しかったね?」
「うん!」

おばあちゃんは「そうね」と嬉しそうに笑った。

「さて、晩ご飯の準備しようかね」
「あ、私も手伝うよー。着替えてくるからちょっと待ってて」

部屋に戻って荷物を置き、部屋着に着替えて台所に入ると、おばあちゃんと並んで晩ご飯を作った。

あの日目を覚ましてから、おばあちゃんと暮らせる時間も限られていることを知って、できる限り手伝いをして時間を共に過ごすようにしたので、料理にもずいぶん慣れてきた。

皿に盛りつけ、今の食卓に運び、向かい合って「いただきます」と手を合わせる。

「んー、おいしい! おばあちゃんの料理、ほんと美味しいよね」
「あらまあ、ありがとね」
「私のほうこそ、いつもご飯もお弁当も作ってくれてありがとう」

一度目の夏では、まさかおばあちゃんとこんなに早く別れることになるとは思っていなくて、日頃の感謝を伝えることもできていなかった。

だから、二度目の夏は、『ありがとう』をできるだけたくさん言うようにしていた。